此処は有機に明滅する電灯に照らされた『ボク』の影です
# たゆたうなゆた
私はその風景に思わず立ち止まったプラットホームの端。
目の前には背の低い、しかし直径10メートルは越えると思われる円柱が無造作に並んでいる。
その向こうには金網を挟んで、発電所と思しき建物が居並ぶ。
右に視線を移せば線路の末端があり、
明らかに人が乗り降りするには奥まり過ぎたそこでは、動く気配の見られない電車が鈍く日の光を反射していた。
私が立つコンクリートの床は円柱(私はそれを機能を持たない単なるオブジェと判断する)の並ぶ区域の前で途切れ、
円柱の周囲にはおそらく手入れのされていない(或いは恐ろしく計算高い手の入った)雑草が疎らに生えている。
私はその光景に、およそ似つかわしくない色を認め、注視する。
それはタンポポだった。
円柱の根元に一輪だけ花を咲かせたタンポポは、肌に感じられる程の風もないと言うのに、優雅に身を揺らしている。
その光景にすっかり魅了された私は肩にかけたカバンの中を弄った。
そしてカメラを手にして顔を上げた私は内心舌打ちした、上に立つつもりでいた円柱にいつの間にか腰掛けた人物がいる。
さらにその奥の円柱には気付かぬうちに文庫本を広げた女子高生が座っていた。
背後から私の名を呼ぶ声が聞こえた。
私は名残惜く風景を眺めたあと、カメラを手にしたまま背後の下り階段へと向かった。
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